日本の賃貸市場で進む外国人需要:供給は追いつくのか?
- 坪井 HaruNest
- 2025年10月23日
- 読了時間: 8分
更新日:2025年10月29日

外国人の住まいは足りているのでしょうか。
在留外国人が約395.7万人規模となった現在、賃貸市場では「必要なときに、必要な場所で、必要な仕様の部屋が見つからない」という現場の声が高まっています。
特に東京23区では、2024年の世帯増の過半を外国人世帯が占め、豊島区・新宿区などでは寄与度が突出しています。
結果として、駅近・築浅・多言語対応・家具家電付きといった“初期対応型”の在庫が局所的に枯渇し、募集から成約までのスピードが加速し、在庫のタイト化が常態化しています。
本記事では、「需要」と「供給」を最新の数字と現場トレンドでフラットに可視化し、何が足りず、どこを変えればタイト感が和らぐのかを明快に整理します。
外国人の採用や受け入れ計画に直結する「住まいの可用性」を、都市部の実情/在庫の質的ミスマッチ/短中期の見通しという三つのレンズで読み解きます。
“いま現場で起きていることだけ”を抽出し、解釈は最小限に抑えています。
意思決定に使えるのは、誇張ではなく事実です。
“住まい”を採用・受け入れのボトルネックから外すために、まずは市場の地図を最新化しましょう。
この記事を読み終える頃には、
・どのエリアで、どのようなお部屋が、どれだけ不足しているか?
・早期に効く在庫の作り方
・2025年の繁忙期に向け、社内外で合意すべき標準
がクリアになります。
“わからないから動けない”時間をゼロにして、本題へ進みましょう。
第1章 需要の実像(2025年時点)
在留外国人は“約395.7万人”(2025年上期時点):2024年末の376.9万人からの増加幅

2025年上期の在留外国人は約395.7万人です。
2024年末比で約18.8万人増(約5%)と高い伸びを示しました。
背景には、製造・介護・外食など人手不足業種の採用再開、留学生の入国正常化、高度人材の採用競争の激化があります。
短期滞在から中長期への移行が進み、単身ワンルームに加え、同棲・配偶者帯同・同国コミュニティ同居など需要の“世帯化”が拡大しています。
更新・転居・ステップアップ入居が同時に走るため、季節要因に依存しない通年の基礎需要が底上げされました。
これにより、即入居可能な初期対応型と、設備水準の高い1LDK~2LDKの二層で在庫が枯れやすい状況が続いています。
東京23区の世帯増を外国人世帯が過半で牽引(豊島区99%・新宿区83%ほか)

2024年の23区では世帯増の過半が外国人世帯由来でした。
豊島区99%・新宿区83%という極端な寄与は、山手線内外・副都心沿線の賃貸回転を加速させ、空室期間の短縮と賃料の粘着的上昇を招きました。
多言語対応の募集・オンライン内見・電子契約を整えた管理会社は成約速度で優位に立ち、逆に運用が日本語前提の物件は在庫滞留の傾向が強いです。
周辺では池袋・高田馬場・新大久保・錦糸町など“言語支援・生活インフラが整うハブ”への集積が進行しています。
大阪(難波~天王寺)や名古屋(栄~名駅)でも同質の集積が観察され、都市型コアの需給タイト化は広域で連動しています。
都市部集中と属性の変化:若年層中心・就労・留学の回復

流入の主役は20~30代です。
就労は特定技能・専門職・高度人材の層が厚く、留学は語学~専門学校~大学院まで幅広いです。
属性の変化として、IT・研究職など“場所を選ばない高報酬職”が1LDK~2LDKやSOHO対応物件を選好する一方、初期費用を極力抑えるサービスアパートメント的な滞在も拡大しています。
宗教・食文化・衛生観の違いから、キッチンサイズ・浴室仕様・床材・共用部ルールの要望が具体化し、物件選定のチェックリスト化が進みました。結果として、単なる戸数の不足ではなく、仕様と運用の適合性こそが成否を分ける局面に入っています。
第2章 供給の現在地(不足の可視化)
“需要>供給”が続く要因:言語・保証・与信・運用の壁

ギャップの核は四層に整理できます。
①言語:図面・重要事項説明・ルール掲示が日本語中心で、問い合わせ段階で離脱が発生します。
②保証:国内与信履歴が薄い入居希望者に対し、保証会社の審査基準がばらつき、緊急連絡先の要件も障壁になります。
③与信評価:在留資格・就労形態・雇用主の信用を誰がどのように判断するかが属人化しています。
④運用:入居後の生活サポート(ゴミ出し、近隣配慮、設備問合せ)の多言語運用コストが敬遠され、受け入れ枠が広がりません。
四層が連鎖してコンバージョンを阻害し、“問い合わせは多いが入居に至らない”現象が常態化しています。
さらにこのような状況は仲介不動産会社目線で見ても、”労力に対しての利益が見合わない”為に、消極的な対応となる原因となっています。
ミスマッチの中身:家具家電付き/短期解約柔軟/多言語運用/保証一体型の在庫不足

初期対応型の要件は明確です。
即入居を叶える家具家電付き、帰国や転勤・学業変更に備えた早期解約の柔軟条項、内見~入居後サポートまでの多言語一気通貫、そして審査・支払い・トラブル窓口まで含む保証一体型が求められます。
にもかかわらず、供給は住戸×日本語運用×長期前提が主流で、ニーズとの位相がずれています。
さらに、礼敷・仲介・鍵交換・火災保険など初期費用の複雑さが心理的コストとなり、申込の躊躇やキャンセルを誘発します。市場が求めるのは、価格・仕様・手続きの“わかりやすさ”の標準化です。
吸収の試み:築古リノベ・法人借上げ・社宅化(エビデンス整備の課題)

実務では、築古ストックを軽量リノベ+家具家電パッケージで商品化し、法人一括借上げや社宅化で空室を吸収するモデルが増えています。
運用分担は、
仲介:集客・審査、
管理:多言語CS・設備、
企業:生活ルール初期指導・伴走、
保証:与信・延滞抑止、
と機能別に整理すると事故率が下がります。
課題はエビデンスです。稼働率や退去理由、延滞率、クレーム件数、原状回復費用のKPIを共通定義で集計できておらず、成功事例の外挿が難しい状況です。横断データの整備が、面としての供給増の臨界点を押し上げます。
第3章 2025年の見通し(短中期)
短期:都市部で高需要が持続、在庫タイト化の継続リスク

2025年は三大都市圏を中心に高需要が継続します。
春・秋の移動期に加え、企業の通年採用と学校カレンダーの多様化でピークの多峰化が進みます。希望条件は駅近・築浅・インターネット無料・オンライン手続き・多言語問合せ窓口が中心です。
募集開始からの成約までの期間がさらに早まり、単身~小世帯の見学前満室化が散発する見込みです。
短期的な緩和には、空室の家具家電後付け、保証・多言語CSをセットにした月額パッケージ化、内見~契約~入居までの平均リードタイム短縮(例:14日→7日)が即効薬となります。
中期:制度・運用の見直しが供給設計(量と質)を左右

中期の焦点は標準化と省力化です。
契約書・重説の多言語テンプレート、在留資格×雇用形態に応じた与信の共通ガイド、敷礼・違約・原状回復の明文化ルールが整えば、オーナーの心理コストは低減します。
DXでは、本人確認eKYC、電子契約、チャットボット多言語CS、家賃決済の自動化が現場負荷を削減します。
公営・UR・民間・企業社宅の協調在庫を地域プラットフォームで可視化できれば、初期受け皿の層が厚くなります。
量の拡張と同時に、初期対応型仕様への転換が進むことで、需給バランスは改善軌道に乗り得ます。
初期対応型ストックへの転換なしに逼迫緩和は限定的

需要の構造的増勢と都市集中は当面続きます。
したがって、緩和の主戦略は初期対応型の量産です。
家具家電付き・保証一体・多言語運用・柔軟な解約条項・入居後CSを“標準装備”化し、築古再生や法人借上げでスケールさせます。
加えて、募集~入居日数、更新率、延滞・苦情・原状回復費用といった共通KPIを横断公開し、成功モデルを地域単位で展開します。
これが実現すれば、2025年後半の局地的逼迫は和らぎ、2026年に向けて量と質の均衡が見え始めます。
まとめ:条件を“賢く緩めて”、お部屋探しは“前倒し”で

需要が強く、供給が追いつきにくい2025年の都市部では、「完璧な条件が揃う物件」を待つほど機会損失が大きくなります。
皆さまにお願いしたいのは、シンプルに二つ――条件の緩和と早期着手です。
この二本柱が、着任遅延やキャンセルの連鎖を断ち切ります。
まず条件の緩和についてです。日本人連帯保証人の必須化は保証会社+法人契約で代替し、入居開始日の柔軟化(半月前倒し/日割り活用)をご検討ください。短期違約金の緩和や原状回復の明文化は申込の躊躇を減らします。内装や設備は「譲れない必須」と「代替可能な希望」に分解し、家具家電付き/インターネット無料/電子契約可のいずれかが満たせる物件を優先して“実用解”を取りに行くのが現実的です。
次に早めに始めることです。内定(内示)から4〜8週間前には検索を開始し、依頼から1週間以内に候補抽出→物件紹介後2~3日で決定(内見をする場合は並行して行う)→決定後遅くとも1~2日以内に申込み手続き→入居審査。ここまでを標準タイムライン化します。履歴書・在留カード・就労証明・給与見込など審査書類を事前に準備し、内見枠は平日昼帯の先行予約で確保します。仲介と連絡手段を1本化(メールやチャット)し、合意事項はテンプレで即共有します。こうした“段取り勝ち”が、見学前、申込前満室化を回避する最短ルートになります。
社内運用としては、①受け入れ基準の最小化、②初期費用の上限レンジ提示をセットで回してください。
条件緩和と前倒しが“定義された仕組み”として回り始めれば、結果は安定します。
最後に合言葉を置きます。「待つより、決める」「完璧より、到達」です。
需要が強い市場では、動きの速さと柔軟性こそ最大の武器です。今日から、条件を賢く見直し、検索と準備を前倒しにしていきましょう。
これが2025年の勝ち筋です。
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